東放学園

TOHO会

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今日も絶好調

2016年01月20日

1月20日(水)この冬、暖かかった東京も月曜日は雪。相変わらず交通機関は脆弱で各地で混乱。間引き運転、遅延、毎年同じようなニュース画像が流れた。

0120-4サロン書斎


先週本屋をのぞいていたら、
新たにカズオ・イシグロのコーナーができていて、
TVで『わたしを離さないで』のOM AIRの影響か。
この本だけすべて売れきれだった。
「何せ世界のイシグロ」で『わたしを離さないで』は、
日本でも2014年蜷川幸雄演出、多部未華子主演で舞台化。
TVドラマ化は初めて。日本にも数多くのファンがいるからか。

その第一回を観た。
「臓器提供者として生まれたクローン達の切なく、やるせないものがたり・・・」
山奥の人里離れた隔離された寄宿舎が舞台。
ある日、主人公(綾瀬はるか)たちは責任者の先生から、
その残酷な宿命を告げられる。
「・・・皆さんは人の命を救うエンジェル」なのだと。
そして数奇な運命を描く哀しいドラマが始まった。

0120-1


原作の文章は「わたしの名前はキャシー・H。いま31歳で介護人をもう11年以上やっています。」
主人公の一人称小説の回顧から始まる。

もしこの物語を無理にジャンル分けをするなら、
わたしはSFで言うパラレルワールド(並行宇宙)の物語として読んだ。
近未来、人間たちが長生きするための犠牲者(提供者)をあらかじめ用意する。
「それが人類のためなのだから・・・」と。
恐ろしい話である倫理観、宗教観を見ないふりをする。
イギリスでクローン羊が誕生したころ書かれた本だ。
こうしたサクリファイス(犠牲者)の青春ドラマが前半のストーリー。
原作では精妙で端正な語り口で読むものを引っ張っていく。
イシグロのひとつのテーマ「運命は不可避である」と・・・。

これ以上書くとネタバレになるのでこのへんで。

『わたしを離さないで』ハヤカワepi文庫 土屋政雄訳


それと先週今年初めて映画を観た。

『ブリッジ オブ スパイ』(Bridge of Spies)
〜inspired by true events
トム・ハンクス(主演)S・スピルバーグ監督。
久しぶりに映画らしい映画を鑑賞。
舞台は1957年アメリカ、米ソ冷戦のさなか。
非凡な日曜画家を装うソ連のスパイが逮捕される。
弁護士(トム・ハンクス)はかつてニュルンベルク裁判で腕をふるった国選弁護人。
トムが詳細に事件を調べて一方的な裁判に反発。
懲役刑に減刑される。(いつかこの被告が役に立つと判事に申告)

数年後その機会がやってきた。
アメリカのスパイ機がソ連領空で撃墜されパイロットが捕まってしまう。
一方ベルリンの壁が築かれている中でアメリカの学生がスパイ容疑で逮捕。
国境の橋の上でスパイ同士の交換が始まろうとする・・・。

0120-3スパイ


歴史オタクのスピルバーグ監督が選んだ時代と舞台。
今のような高度なITを駆使した情報戦ではなく、
人間臭さの残るやり取りがあった。
スパイがただの駒にすぎないのは変わりないのだが、
人が介在するシーンが多かったように思える。

映画は「画」だ。
いかに過去を再現するか、その擬似リアリティを獲得するか。
町並み、衣装、小道具・・・。
たった今見てきたような設えでなくては。
脚本はあのコーエン兄弟(『ノー カントリー』など。さすがに旨い語り口だ)
トム・ハンクスも微妙に抑えめの演技で魅せる。
対するソ連のスパイ役 アベル(マーク・ライランス)の、
静謐を絵にかいたような演技はもしかしたら、
トム・ハンクスをかなり食ってしまったに違いないと感じた。

近ごろ先の大戦の話を題材にした映画が多く作られているようだ。
資料も出そろい過去の歴史に評価が一定の見方ができるようになったからか。

それにしてもS・スピルバーグは映画オタクであり歴史オタク?
冒頭にもあったように1960年代のアメリカ社会はベトナム前の絶頂期。
わたしとほぼ同年代の監督はハイスクール時代にこの事件を知っていたかも。

過去の歴史は見方によっては玉虫色に映る。
事実を書きかえることはできないが、
記憶され、集められ、切り取られ、主観がその重さを確かめる。
その数知れない積み重ねが歴史の評価につながっていく。
時代はそれらを重ね合わせながらその時代の歴史観に収斂する。

映画はもう一つの作られた歴史観なのだ。

翻って自分史はどうなのだろうか。
自分の都合のよいように書き換えるのは勝手だ。
でも本当は他者の視点が(例えば映画とか)必要なのだ。
不可知論になる前に誰かに自分を語ってもらいたいものだ。

知っているようで知らない自分がこうして今日も存在している・・・。

今週末は静岡TOHO会だ。
自分とかかわったOBの方々「あの日あの時の」歴史を語りましょうか!

0120-2かもめ


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