2015年02月25日
2月25日(水)日の暮れも伸びてきて、これからは三寒四温。はやく温かい春になればと思うこの頃です。
詩人であり名翻訳家の岩田宏さんが亡くなった
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『いやな唄』
あさ八時
ゆうべの夢が
電車のドアにすべりこみ
ぼくらに歌ういやな唄
「ねむたいか おい ねむたいか
眠りたいのか たくないか」
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無理なむすめ むだな麦
こすい心と 凍えた恋
四角なしきたり 海のウニ・・・・・
岩田宏詩集から
オマエはいったいどうしたいののか?
判断を迫られる現代人のひとつの解。
それはすぐに決断をしない。
態度保留も有りなのだ。
哲学で言う「エポケー」判断停止状態。
日常私たちはそんな局面に立たされる。
人の世はゲームではないので、
すぐに選択を迫られても困ることがままある。
白黒を、決着をすぐにつけなくてもよいのでは。
・・・ならば四角なしきたり 海のウニと
軽く韻を踏んで言葉遊びでピョンと飛んでみたら
私はそんな風に思って読んでいた。
翻訳者としてはSF、ミステリーを数多く訳した。
いずれも名訳。
SFではレイ・ブラッドベリ『火星年代記』『刺青の男』など
ミステリーではミッキー・スピレインやロスマクドナルド。
ロスマクの『さむけ』や『縞模様の霊きゅう車』など。
ときには原作を超えているのではと言うほど秀逸。
学生時代から詩や訳文でお世話になった・・・合掌
それにしても「ことば」は奥が深い。
目の前に無くても言葉で言い募ることが出来る。
「非在の現前化」
文化人類学者 レヴィ=ストロースは
その著書『悲しき熱帯』などで、
われわれは決して文明人ではない。
なぜならこの島では同一の小鳥の名前が20以上もある。
卵の時、雛の時、成鳥前など細かく名付け分類して呼んでいる。
かくも豊かに言語表現をしているのだ。
未開などと言うべきではないのだと。
大事な言葉がすれ違わないように、
詩人の役割は大きい。
アルファベットには色があると云ったのは
フランスの詩人A・ランボーだった。
ことばは記号的な側面も持つが、
単なる道具やメディアではないはず。
初めに言霊ありき。
実に奥深い世界だ。
今日もどこかで言葉と格闘している詩人が入る筈だ。