東放学園

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今日も絶好調

2014年03月05日

3月5日(水) 今日は朝から冷たい雨が降っています。春先の天候は気まぐれ、寒暖が烈しい。「春霙 (みぞれ)」にならなければ良いのだけれど…。


3-5-2

前回、図書館の『アンネの日記』が
破損される事件を書いた。
その折、
フランクルの「夜と霧」に触れたが、
その映画作品を撮ったフランスの監督、
アラン・レネ氏が先日亡くなった。

学生時代(1960年頃)は、
フランス・ヌーベルバーグが
各自、自由奔放な作風で
若者の心を捉えていた。
手持ちで移動する撮影、
画面のブレも演出のうち。
モダンジャズをバックに
音響も斬新なのだ。
私たちのサークルも
日本映画は片隅に追いやられていた。
その頃、先輩の一人が私に
「映画をもっと知性的に見るなら
 アラン・レネを観るように」
と教えてくれたが、
なにせ記録映画の短編ばかり。
その頃は『ぴあ』も無くって、
苦労して上映館を探し、
ようやくアテネフランスや日仏学院の
上映会にたどり着いた。
短編『ヴァン・ゴッホ』『ゲルニカ』を観た。
淡々とした詩的で、
思索的なナレーション。
絵画の画面を効果的に切り取り、
クロースアップや移動を繰り返す。
新手法のドキュメンタリー作品
(当時は記録映画と言っていた)に感動。

そして翌年、
あの『夜と霧』に出会う。
30分ぐらいの短編だが、
ナチスのホロコーストのひとつの象徴。
ポーランド南部にある
アウシュビッツ強制収容所跡の記録映画。
カメラは今は廃墟になってしまった、
そこにある貨車の引き込み線を
ゆっくりと前進移動していく。
押さえたナレーションで。
まさにここで、
十数年前に
とてつもない惨劇が行われたことを告げる。

『夜と霧』
“夜”陰に紛れて
“霧”の様に消す。

ナチスの暗号名。
計画が実施される。
一つの民族を消し去る、
ホロコースト計画。
ガス室の後、
遺骨や遺髪の山を
ダンプカーが穴に落とし込む。
終戦時、
解放された時の記録映像をインサート。
今は単なる田舎にある
レンガづくりの施設からは、
想像もつかない大きな負の記憶が甦ってくる。
当時のナチの関係者は
声を揃えて言う。
「私には責任はない、
 ただ上官の命令でしたこと」と。

この映画では、
現在のアウシュビッツ風景から
過去の忌まわしい事実を断罪していく。
細かいカットバックや記録映像を
効果的にコラージュして、
忌まわしい過去を忘却。
すぐ前に進もうとする人々への
警鐘を鳴らす…。
当時の記録映画としては
画期的な作品となった。
もちろん映画は
頭で見るモノではないが、
映像を分析的に、論理的に
構成する手法もあるのだ。

3-5-1

イギリスのドキュメンタリー映画の父、
ポール・ローサは、
「ドキュメンタリーとは現実の創造的劇化」
と言う。
現実・事実を作家のテーマに則して再構成して、
真実を劇的に創造すること=ウ〜ン(かえってヤヤコシイ!)。
起きている・起きてしまった事実(映像)を
作家の考えをもとに、
新たな考えやテーマを導き出すことらしい…。
ひりの監督から学んだことは
本当に多い。
この文章が
アラン・レネ氏への追悼になればいいのだが。                        
          <合掌>

この頃は
青春期に感銘を受けた方々が
逝ってしまうことが多い。
まだ後ろを振り返る余裕があるのは
良い人生なのだろう。

3-5-3



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